地理学の特色の一つはフィールド・ワークを重視することです.自分の足で地域に出かけ,地形の形状や土地利用の現状,労働現場を見て,人々の声を聞き,資料にあたり,問題点を考えること,単なる「見学」ではなく,自らが身体ごと現場に関わること,そうしたフィールド・ワークを通じて地理学の研究は深められます.そのため地理学教室では室内でおこなう実習とともに野外でおこなう地域調査実習に重点を置いています.
2年次に履修する「人文地理学実習」および「自然地理学実習」では各種地図の作成と読図,空中写真の判読,地域データの収集とコンピュータによる統計処理や画像処理を学びます.さらに授業時間以外にも年に数回,主として北陸地方の企業・事業所の訪問,都市開発の見学,露頭観察や地形調査などをおこなうことによって,現代社会におけるさまざまな地域問題や環境問題について体験的に学習します.
地域調査実習は2年生から3年生にかけて実施されます.2年生の「地域調査基礎実習」では、地域の実情と問題を広範に知るための基礎的な地域調査が4泊5日ほどかけておこなわれます.3年生になると2年生での経験と各自の研究関心に基づいて、「地域調査応用実習」「自然環境応用実習」「地域プランニング実習」のいずれか一つを選択して、より専門的な地域調査がおこなわれます.期間は同様に4泊5日ほどですが,こちらはより専門性と応用力が必要となります.これらの地域調査の成果は,調査後にレポートとして提出され,『地域調査実習報告書』にまとめられます.
こうした手順を踏んだのちに,4年間の大学での学習の集大成として卒業論文に取りかかります.テーマは各自が興味あることについて自由に設定できます.実習や地域調査での経験を踏まえて,各自が自分の力で調査をおこない,資料を集め,分析をおこない,論文に仕上げていきます.このように自分で課題を見つけ,科学的な分析と合理的な説明によって,それを一つの成果にまとめてプレゼンテーションしていくという作業は,卒業後に企業や社会で求められる不可欠の技量であり,その鍛錬にもなります.